ポッサムとオポッサム。同じ動物のことを指していると勘違いしていませんか?今回の記事はタスマニアを含むオーストラリアからニューギニア島にかけて広く生息分布しているポッサムについてです。
ポッサムって?
ポッサム (Possum) はオーストラリア区のオーストラリア、ニューギニア島、スラウェシ島に生息する中小サイズの樹上生息有袋類の一般呼称です。分類学的には有袋類双前歯目(そうぜんしもくDiprotodontia)クスクス亜目(Phalangeriformes)の複数の科にまたがっている動物たちです。この特徴がポッサムだという厳密な定義はないようです。
オーストラリア区(Australasia)は生物地理区の一区分で、オーストラリア、ニュージーランド、および周辺諸島を含むエリアのこと。
面積:770万平方キロメートル。
生物地理区(Ecozone/Biogeographical Region)とは地球上の地理区分のひとつ。生物の分布をとらえて世界を8つの地理区分にわけたもののこと。
名前の由来
ポッサムという名前はアメリカ大陸に住むオポッサム(opossum)に似ているところから名付けられました。このオポッサムという名前はアメリカ原住民ポウハタン(Powhatan)族が話していたアルゴンキン語に属する言語、ポウハタン語の”aposoum”(白い動物)からきているそうです。因みにこのポウハタン族というのはディズニー映画で有名になったポカホンタスがいた部族です。
ポッサムとオポッサム
ポッサムとオポッサムはしばしば混同されています。
どちらも樹上生息有袋類でオポッサムは北アメリカ大陸から南アメリカ大陸にかけて生息しています。オーストラリアでは、特に年長者がポッサムのことをオポッサムと呼ぶことがあり、北米ではオポッサムの1種キタオポッサムのことをポッサムと呼ぶことがあります。
しかし、オポッサムは分類学的にはオポッサム目オポッサム科で1目1科。同じ有袋類であるという以外ポッサムとオポッサムの間には関連性はありません。
ホバート郊外にはオポッサムベイ(Opossum Bay)と呼ばれる湾がありますが、この名前はポッサムとオポッサムを間違えて名付けてしまったようです。
ポッサムの仲間たち
ポッサムは分類学的には双前歯目(そうぜんしもくDiprotodontia 別名カンガルー目)クスクス亜目 Phalangeriformesに属しています。クスクス亜目には6科がありその全てにポッサムと呼ばれる種がおり、あわせて約30種のポッサムがいます。
- クスクス科 Phalangeridae
- 大きくポッサムとクスクスに分けられる。この科にはポッサムの中でも代表的なフクロギツネ (Common Brushtailed Possum)がいる。体長約50cm、体重約2.5kgと最大級のポッサム。ブラシ状のフワフワした尾が特徴的。草食性だが昆虫なども食べる。
- リングテイル科 Pseudocheiridae
- フクロムササビ以外はリングテイル (Ringtail Possum) と総称される。この科の代表種はハイイロリングテイル (Common Ringtail Possum)。長い尾を枝に巻き付けて木に登ったり、巣の材料にするための小枝を尾で巻き付けて運んだりもする。草食性。
- ブーラミス科 Burramyidae
- ピグミーポッサム (Pygmy Possum) と総称される。ポッサムの中で最も体が小さいグループで、昆虫などを餌にする。ブーラミス (Mountain Pygmy Possum)、フクロヤマネ (Eastern Pigmy Possum) などの種がある。一番小さいチビフクロヤマネ (Little(Tasmanian) Pygmy Possum) は体長6.5cmほどしかない。和名のフクロヤマネは、ヤマネのように冬眠することから名付けられた。
- フクロミツスイ科 Tarsipedidae
- フクロミツスイ (Honey Possum) の1属1種。オーストラリア南西部にのみ生育。ネズミ大のポッサム。先端がブラシ状になった長い舌を持ち、花の蜜や花粉をなめて餌としている。歯は退化している。
- フクロモモンガ科 Petauridae
- 背中の縞模様が特徴的なフクロシマリス (Striped Possum)、やシュガーグライダー(Suger Glider)、絶滅が危惧されているフクロモモンガダマシ (Leadbeater’s Possum) を含む科。雑食性で昆虫や果実、樹液を餌にしている。
- チビフクロモモンガ科 Acrobatidae
- ニセフクロモモンガ (Feather-tailed Possum) が属する。
ポッサムの生態
ポッサムは夜行性です。日中は木の洞などに作った巣に隠れていて日が沈んで暗くなると活動を始めます。
単独で生活しているか、つがいで子供と生活しています。あえて北半球の動物に例えるならリスにあてはまります。
後肢の指は親指と他の指が対向し木の枝をつかむことが出来るので木登りが得意です。また、人差し指と中指はくっついていて一本の指のように見えます。外見上の雌雄の差が少なく見ただけでオス・メスの区別をするのが難しいようです。
ニュージーランドでは嫌われ者?
ニュージーランドではブラッシュテールポッサム(フクロギツネ Common Brushtail possum)が害獣として忌み嫌われています。
ブラッシュテールポッサムは昔から毛皮を採取する目的で狩猟の対象となっていました。ヨーロッパからの入植者たちはブラッシュテールポッサムが生息していなかったニュージーランドにも毛皮採取の目的でビクトリア州とタスマニア州のブラッシュテールポッサムを1850年代に放獣しました。ニュージーランドにはブラッシュテールポッサムの天敵がいないため爆発的に増殖。1980年代までのピーク時の頭数は推定6000〜7000万匹に達しました。その結果、在来種に影響を与えたりウシの結核を伝播させたりという理由で駆除対象になっています。駆除作業は功を奏していて2009年までに頭数は推定3,000万匹に減少しています。
ブラッシュテールポッサムは有袋類としては唯一世界の侵略的外来種ワースト100リストに選出されています。勝手に人間によって連れてこられたら今度は嫌われ者。ブラッシュシテールポッサムに同情してしまいますね。
タスマニアのポッサム
タスマニアには現在5種類のポッサムが生息しています。
- フクロギツネ (Common Brushtail possum – Trichosurus vulpecula)
- ハイイロリングテイル( Common ringtail possum – Pseudocheirus peregrinus)
- フクロヤマネ(Eastern pygmy possum – Cercartetus nanus)
- チビフクロヤマネ(Little(Tasmanian) pygmy possum – Cercartetus lepidus)
- シュガーグライダ(Sugar glider – Petaurus breviceps )
この5種類のうちシュガーグライダーは元々タスマニア島には生息していない動物です。ヨーロッパからの入植者たちが1800年代初頭の入植初期の段階でビクトリア州からタスマニア島へ持ち込んだものだと推察されています。
本来シュガーグライダーは名前が示す通り蜜や樹液、補助的に昆虫などを餌にしている動物でした。しかし近年シュガーグライダーが絶滅危惧種のオトメインコ(Swift Parrot)の卵、ヒナ、成鳥までも捕食していることがわかりました。現在タスマニア州政府ではオカメインコを守るためシュガーグライダーへ罠を仕掛けて駆除をしていく政策をすすめています。