タスマニアを含むオーストラリア東部にのみ生息しているユニークな生き物のカモノハシ。
このページではカモノハシについて解説しています。
記事は3ページに分かれています。各ページの記事内容は下記の通りです。
1ページ目(このページ):カモノハシあれこれ
2ページ目:カモノハシの形態と生態
3ページ目:カモノハシの繁殖・成長・寿命
カモノハシあれこれ
名前の由来
カモノハシ、英名ではプラティパス/Platypusといいます。
ギリシャ語で”平たい足”、”扁平な足”の意味だそうです。
また、”Duck-billed Platypus(ダックビルドプラティパス/カモのクチバシのついたプラティパス)”と呼ばれることもあります。
この”Duck-billed/カモのクチバシ“からカモノハシという名前がついたといわれています。
生きる化石・単孔類
カモノハシは単孔類(目)にカテゴライズされている哺乳類です。単孔類とは卵を産んで孵化した赤ちゃんは母乳で育てるという、原始的な哺乳類です。
カモノハシを含む単孔類についてはまだまだ研究中で、今後新しい発見があるかもしれません。
僕はハリモグラ。カモノハシ君と同じ単孔類だよ。単孔類についての解説ページも併せて読んでね。
現在発見されている最古のカモノハシの化石は、10万年前のものがあります。カモノハシの先祖の化石となると、約1億1000万年前のものや約1億6700万年前のものも発見されています。
更に、約500万〜1500万年前の巨大カモノハシ種の化石化した歯が発見されています。歯の大きさから判断すると、動物の体長は1.3メートルで記録上最大のカモノハシになっています。
カモノハシとヨーロッパ人
1798年にヨーロッパ人が最初にカモノハシに出会って、その後毛皮やスケッチが英国へ送られました。
最初にこの標本を見たイギリスの学者たちはどうしても本物と信じられず、「偽物だ。」、「いくつかの動物を縫い合わせたまがいものだ。」と結論づけたそうです。(1799年)
とてもユニークな姿
カモのクチバシ、ビーバーの尻尾、カワウソの足を持つといわれる姿はとてもユニークで、イギリス人が偽物と結論づけたのも無理がありません。
ユニークでかわいらしい姿は昔から様々なキャラクターにも使われています。 2005年日本国際博覧会 、愛・地球博(愛知万博)のオーストラリア館には巨大カモノハシの模型「カモン」が飾られていたのを覚えている方もいるかもしれません。
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カモノハシの形態と生態
生息地域
先述した通りカモノハシはオーストラリア東部とタスマニアにのみ生息しています。
カモノハシは半水生生物で、タスマニアの寒冷な高地からクイーンズランドの熱帯雨林、山間部の小さな流れから開けた本流、農場の溜池から広大な湖まで広範囲にわたって生息しています。
クチバシには超能力が!
カモノハシは水中では目を閉じています。ではどうやって獲物をさがしているのか?
カモノハシのクチバシには獲物からわずかに発せられる電流を感知する器官が備わっています。
これはロレンチーニ器官と呼ばれ、サメやエイなどにも備わっている器官です。この器官は主に水中で獲物をさがす役割を担っています。
カモノハシはクチバシで水底を掘り返し、出てきた獲物の筋肉から発せられる微弱な電流を感じて獲物を発見、捕食をしています。
水の中で目を閉じているけど僕のクチバシが食べ物をさがしてくれるよ。
食べ物
肉食で主にミミズ類や昆虫(主に幼虫)、エビやザリガニなどを捕食して食べています。
カモノハシはそのクチバシで川底からそれらの獲物を掘り起こして食べるか、泳ぎながら水中にいる獲物を捕食しています。
カモノハシは一日に体重の20%の食事をとらなければなりません。そのため毎日平均12時間を食事さがしに費やしています。
必殺仕事人・カモノハシの毒針
カモノハシは雌雄両方の後ろ足の足首に爪があります。そしてオスのそれには毒があります。
人間を殺すほどの毒ではないのですが、犬程度の大きさであれば死に至らしめることも可能です。
もしその毒爪に刺されたら我慢できないほどの激痛が襲ってくるそうです。刺された個所から急速に浮腫み始めて徐々に全身が浮腫んでいくようです。
痛みは数日から数か月間続き、ある例では刺された個所が生涯痛み続けたということです。
僕を捕まえようなんて考えないことだね。手を出したらチクっと刺しちゃうよ。
何時ごろが一番出会えるの?
主に早朝や夕方の薄暗い時に活発に活動します。日中は巣穴に籠っていることが多いです。しかし先述したように一日12時間程を捕食に費やしているので、日中でも全然姿を見かけないということはありません。
実際、釣りの最中に結構な頻度でカモノハシに出会うことがあります。「ポチャン」という音が聞こえて、トラウトかと目を凝らすとカモノハシだったなんてことは釣り人のあいだではよく聞く話です。
また、カモノハシは群れるこをせず単独で行動する動物です。一匹みつけたからと、仲間をさがそうと辺りを見回してもその近辺には他のカモノハシはいないでしょう。
野生の僕らを見たいならとにかく実績のある川沿いへ行ってみて。いる時にはすぐに見られるよ。逆にいない時は何時間待っても出てこないけどね。
巣はどこにあるのか?
カモノハシは水辺に穴を掘って巣としています。入り口の直径は約30 ㎝ほど。 巣穴の入り口は水中にある場合もあり、かつ植物などで隠されているため発見することは非常に難しくなっています。
大きさ
オス | メス | |
最大全長 | 63 cm | 55 cm |
平均全長 | 50 cm | 43 cm |
体重 | 1~3 kg | 0.7~1.8 kg |
地域によって平均サイズが大きく異なります。この違いは気候条件などの要因ではなく
食べ物や人間の侵入など、他の環境要因により平均サイズが異なる可能性があるそうです。
体温
平均体温は32℃と普通の哺乳類に比べると低体温です。
これは過酷な環境で生存してきた単孔類がその進化の過程で適応してきたものと考えられています。
体毛
カラダと広く平らな尾は褐色から茶褐色の密度の高い体毛に覆われています。
その体毛で空気の層を作って水の冷たさから体が冷えるのを守っています。
尻尾
カモノハシの平たい尻尾は脂肪を蓄えておくことができます。尻尾の部分に脂肪を蓄えておく動物は他にはタスマニアデビルが良く知られています。
僕らも尻尾の付け根に脂肪を蓄えているよ。僕らの解説記事も是非読んでね。
歩いて移動できるよ
カモノハシは泳ぎが得意なだけではありません。地上を歩いて移動もします。
その歩き方はユニークで、前足が地面に着く時に水掻きのある指を後ろに折りたたむようにして移動します。
カモノハシは農場内の溜池などでも生息していますが、餌が少なくなったり水質が悪化したりすると他の場所へ歩いて移動します。
目・鼻・口
カモノハシの細長い鼻と下顎は柔らかく、これらがカモノハシの特徴であるクチバシを形作っています。
カモノハシの成体には歯がありません。
鼻の穴はクチバシの表面にあり、目と耳はクチバシのすぐ後ろにある溝にあります。
この溝は水泳時に閉じられます。
そのことからカモノハシは水中では目を閉じて獲物をさがしているのです。
潜水時間
通常カモノハシは約30秒毎に水面に戻って息継ぎをします。もう少し長く潜っていることもできるようですが、約40秒が限界であろうといわれています。
約10秒~20秒間、水面をプカプカ浮かんで空気を吸ってから再び水中へと潜っていきます。
運よく野生のカモノハシを見かけたら、水中での移動を予想してみてください。次に浮かび上がった場所が予想よりも遠いのに驚かれるかもしれません。
僕らは水中に潜って水底をクチバシで掘り返しながら獲物をさがしているんだよ。
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カモノハシの繁殖・成長・寿命
メスが一生懸命に巣作り & 子育て
カモノハシの繁殖期は場所によって多少の違いがありますが、6月~10月です。繁殖期になり交尾を済ませたメスは巣穴の拡張工事を始めます。メスは巣穴をより深くより長く(最大20 mの長さ)掘り、巣穴の奥に枯れ葉などで産卵と子育てのための柔らかいベッドを作ります。
*この繁殖期の巣穴作りについてはあまりよくわかっておらず、今現在も研究が進められています。
妊娠期間は2週間~4週間。1~3個(通常は2個)の卵を産みます。メスは卵を抱きかかえ、自分の尻尾にクチバシをつけて丸まって温めます。
そして約6日~10日後に赤ちゃんカモノハシが卵からかえってきます。
この一連の作業中オスは一切手を貸しません。手を貸さないどころか交尾が終わると後は知らんぷり、自分の巣へとさっさと帰ってしまいます。
俺だっていろいろと忙しいんだよ。別に知らんぷりしてるわけじゃないし。
オスの仕事
子育て用の巣作りと子育てに一切手を貸さないカモノハシのオス。それではオスは何をやっているのでしょうか。
オスはある程度の長さのテリトリーを持っています。そのテリトリーの中に5匹~10匹程度のメスが暮らしています。これらのメスはそのテリトリーを持っているオスの彼女たちなんです。
オスの仕事は自分のテリトリーを毎日パトロールして、他のオスが入ってきていないか、他のオスが自分のメスを横取りしていないか、をチェックすることです。
他のオスがテリトリーに入ってきたのに気が付くと、オスは侵入してきたオスに襲い掛かり、相手のカラダに巻き付いて水中へ沈めて溺死させることもあります。
または相手に巻き付いて毒針を何回も刺して殺すこともあります。
更には浮気をしたメスに対しても上記の方法でメスを殺してしまうこともあります。
俺は独占欲が強いのさ。浮気相手も浮気した彼女も両方とも許さないぜ。
ちょっとかわった授乳方法
カモノハシは生まれてくるときは卵からですが、おかあさんの母乳で育てられる哺乳類です。カモノハシのおかあさんにも他の哺乳類同様、乳腺はあります。しかしカモノハシのおかあさんには乳首がありません。ではどうやって赤ちゃんカモノハシに母乳を与えているのか?
母乳はお腹の毛穴などからジワジワっと染み出させています。染み出てた母乳はお腹の溝に溜まり、赤ちゃんカモノハシはそれをペロペロとなめて食事をしています。この授乳方法は同じ単孔類仲間のハリモグラも同様です。
赤ちゃんカモノハシの成長過程
産まれたばかりの赤ちゃんカモノハシには歯がありますが、すぐに落ちてなくなってしまいます。
授乳期間は約5週間。
授乳期間も終わりが近づくと、それまでほとんど巣穴から離れなかったお母さんは徐々に外へ出る時間を増やしていきます。
だんだんと子供カモノハシの巣立ちの時が迫ってきます。
そして約4か月後、幼い子供カモノハシは巣穴から旅立っていきます。
その後子供カモノハシは12か月~18か月で成体へと成長して、約18か月で卵を産むことが可能になる大人へと成長していきます。
寿命
カモノハシは小さい哺乳類としては寿命が長いことで知られています。
野生の個体で平均10年前後、飼育されているもので平均15年前後といわれています。
しかし中にはもっと長生きしたという個体も存在し、野生の個体で20年以上、飼育されているもので23年近く生きていたという記録があります。
カモノハシを見に行こう
タスマニアにはカモノハシと、同じ単孔類のハリモグラを手軽に見られる水族館があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。