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【絶滅危惧種】タスマニアデビルをもっと知ろう

タスマニアを代表する動物、タスマニアデビル。

2018年には「NHKおかあさんといっしょ」の中でも「デビル・ビビる・ガンバる!」という歌が歌われていて、なんとなくタスマニアデビルの名前を聞いたことがあるなぁって人もいるかと思います。

だけど実際のところ、タスマニアデビルっていったいどんな動物なのかってことを知っている人は少ないんじゃないでしょうか。

今回の記事はそんな名前だけは何となく知られているタスマニアデビルについてです。

記事は3ページに分かれています。各ページの記事内容は下記の通りです。
1ページ目(このページ):タスマニアデビルの一般情報
2ページ目:タスマニアデビルの生態
3ページ目:タスマニアデビルの妊娠・出産・子育てそして絶滅危惧問題

タスマニアデビルの一般情報

どんな動物?

タスマニアデビル、もしくはタスマニアンデビルはオーストラリアのタスマニア島のみに生息している肉食の有袋類です。

英語では“Tasmanian Devil”。学名は“Sarcophilus harrisii“。

1936年にタスマニアタイガー(“Tasmanian Tiger/Thylacine”)が絶滅してからは世界最大の肉食有袋類になっています。

カンガルー

袋類とは未熟な状態で生まれた赤ちゃんを母親のおなかの袋の中に入れて育てる動物たちで、最も有名な動物にカンガルーがいるよ。

かつてはオーストラリア本土にも生息していたようですが、アボリジナルたちが持ち込んだ野生の犬・ディンゴとの生存競争に敗れて本土のデビルは約3000年前に絶滅したといわれています。(約500年ほど前という説もありますが、いずれにしてもヨーロッパ人がオーストラリアへ入植してくる以前にはオーストラリア本土のデビルは絶滅していました。)

現在オーストラリア本土で野生のタスマニアデビルを増やす活動が行われています。2020年10月の時点では26匹のタスマニアデビルがシドニーから約300 km北のバーリントントップス国立公園(Barrington Tops National Park)内に放されています。3000年振りにタスマニアデビルがオーストラリア本土に帰ってきたということで、豪州国内はもとより日本をはじめとした多くの海外のメディアもこのニュースを取り上げています。豪本土で今後野生化して増えていくこといいですね。

タスマニアデビルの特徴
  • 夜行性の肉食獣
  • カンガルーやワラビーと同じ有袋類
  • ずんぐりむっくりした筋肉質のからだ
  • 黒い体毛
  • 首や腰回りに白い模様がある(ただし野生の個体種の16%にはこの白い模様がない)
  • 大きな唸り声
  • とても鋭い嗅覚と優れた聴覚
  • 何でも食べる大食漢
  • 原生哺乳類の中では最強クラスの顎の力

身長・体重

デビル

一般的にオスはメスよりも体が大きいよ。

タスマニアデビルの平均の大きさは以下の通りです。

オスメス
頭からお尻までの長さ652 mm570 mm
尻尾の長さ258 mm244 mm
体重8 kg6kg

平均寿命

タスマニアデビルはそんなに長生きする動物ではありません。

野性の個体で約5年飼育下の個体でも7~8年程度です。

名前の由来

タスマニアデビル、名前がおどろおどろしいですよね。

なんといってもタスマニアの悪魔ですから。

実際彼らが大きな口を開けて唸ったり、骨をバリバリと音をたてて食べている様を見ていると”悪魔”という名称もあながち大げさとも思えなくないかもしれません。

は19世紀初頭、タスマニアへ入植してきた白人たちはタスマニア島内を探検するために森の中でキャンプをしていました。

夜、暗くなると森の奥からなんとも恐ろし気な唸り声が聞こえてきます。

ガゥルルルルル@#*&)%シャー

植者たちは森の奥に恐ろしい悪魔が潜んでいるのだろうと考えました。

次に実際にタスマニアデビルを見る機会がありました。

すると体が黒い体毛で覆われていて、赤い耳を持ち、大きく口が開き、その口からは鋭い歯がのぞいているまさに悪魔のような姿の動物がいるではありませんか。

そういった訳で入植者たちはこの動物を”デビル/悪魔”と名付けたのでした。

生息場所

タスマニアデビルはタスマニア島全体に生息していました。

しかし後述する顔面性腫瘍疾患(DFTD)により野生の個体種が激減していて現在ではタスマニア西部が主な生息地となっています。

野生のタスマニアデビルを観察することは現在は非常に難しくなっています。

クレイドルエリアのホテル周辺など餌が豊富にあるところなどで、赤ちゃんデビルが巣穴から外へ出始める時期、10月~1月頃に運が良ければ好奇心旺盛な若いデビルを見ることができるかもしれません。このブレブレの写真はクレイドルマウンテンロッジでデビルの子供がいたので急いでシャッターを切ったものです。撮影日は2009年2月5日午後8時20分。

このページは3ページある記事の2ページ目です。

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2ページ目(このページ):タスマニアデビルの生態
3ページ目:タスマニアデビルの妊娠・出産・子育てそして絶滅危惧問題

タスマニアデビルの生態

狩人であり森の掃除屋さん

タスマニアデビルは肉食ですから獲物を狩ることができます。

デビル

僕らは小さなカンガルーぐらいだったら襲って食べちゃうよ。

カンガルー

ヒェッ!!

デビル

大好物なのが高脂肪なウォンバット。考えたらよだれが出ちゃうよ。

ウォンバット

ヒェッ!ヒェッ!!ヒェッ!!!

そっと後ろから近づいていって大きく口を開けてガブっと噛みついて相手を殺してしまいます。

ただ狩りをするのは滅茶苦茶お腹が空いていて、しかも他に食べ物が見つけられなかった時。

普段は何らかの原因で死んでしまった動物の腐肉病気やケガで弱った動物を捕食しています。

タスマニアデビルがいれば森の中の死体がきれいに片付いてしまいます。

いわば森の掃除屋さんです。

デビル

僕らがいれば森の中はいつでも清潔。死体処理ならおまかせだよ!

強力な顎の力でバリバリと骨まで噛み砕く

タスマニアデビルが狩りをするよりも腐肉を食べていると書きました。

腐肉ですからあまりお肉の部分が残ってないかもしれません。

ですので彼らは見つけた食事を無駄にすることなく毛皮から骨まですべて噛み砕いて食べてしまいます

顎は約80度まで開くことができ噛む力(咬合力/こうごうりょく)は非常に強力で体のサイズとの比では現存する肉食哺乳類の中では一番の強さを誇っています。

デビル

僕らの口元に手を出したら絶対に駄目だよ。指を噛みちぎっちゃうかもね。

この強力な顎の力は、体に比べてちょっとアンバランスな大きな頭と首から生み出されます。

オスの成獣では体重の約4分の1が頭の重さです。

デビルたちのヨタヨタした走り方はこの大きな頭に起因しています。

デビル

頭が大きいっていわれるとちょっと腹立つなぁ。

とっても食いしん坊

タスマニアデビルは好き嫌いなく何でも食べます。

カンガルーワラビーポッサムウォンバットなどの在来哺乳類に加えなどの家畜類、果物野菜昆虫オタマジャクシカエルなどの両生類やトカゲなどの爬虫類等々入手可能なものであれば貪欲に食べていきます。

デビル

好き嫌いなく何でもいっぱい食べるよ!!

タスマニアデビルは毎日平均して体重の15%の量の食事をとります。

最大では体重の40%の量の食事を30分でとることもできます。

これってあなたの体重が60㎏としたら24㎏のステーキを30分で平らげるってことになります。

デビル

僕たちが20匹いると牛一頭を一晩でペロリと食べちゃうよ。もちろん骨も皮も残さないよ。一度テレビの大食い王に挑戦してみたいね。

タスマニアデビルは食べた脂肪を尻尾の付け根に貯めておくことができます。しばらく食べ物が見つからなくても平気です。

餌をさがして一晩中ウロウロ

タスマニアデビルは食べ物をさがして夜の間中、森の中をさまよっています。

毎晩だいたい平均して9 km弱の距離を移動していますが、一晩で50 kmを移動した例もあります。

それだけ歩いてもめぼしい獲物にありつけない日もありますが、尻尾の付け根に蓄えられた脂肪を使ってしばらくは食べ物がなくても大丈夫です。

実はスポーツマン!?

タスマニアデビルの見かけはずんぐりむっくりで鈍くさそうな感じですよね。

でも短距離ですけど時速13 km/hのスピードで走ることができます。

更には時速25 km/hで1.5 km走ったとの報告もあります。

デビル

ヨタヨタ走っているように見えて、本気を出せばやれる子なんだよ。

また若いデビルは木に登ることもできます。

年齢が上がってくると木登りができなくなっていくようですが、これは成獣が若い個体を食べてしまうことがあるのでそれから逃げるためへの適応だとの説もあります。

鋭い感覚

デビル

僕らはとっても鼻が利くんだよ

デビルの嗅覚はとても鋭く半径1 km四方の獲物の臭いを嗅ぎ分けることが可能です。

顔にある長いひげや鋭い聴覚も暗闇で獲物をさがすことに役立っています。

さらにデビルの目は白黒で見えているようで、暗闇で動く獲物を補足することに長けています。

ただし静止している物体を見ることは苦手のようです。

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タスマニアデビルの妊娠・出産・子育て

繁殖期

タスマニアデビルのメスは通常2歳ごろになると妊娠できるようになります。

ただし後述しますが現在タスマニアデビルは絶滅危機に瀕しているので、子孫を増やしていこうとする野生の適応能力で最近では1歳ごろから妊娠できる個体があらわれています。

デビルの繁殖期は3月から4月頃最近では6月頃までという個体も)です。

メスは繁殖期の前の春から夏の間に餌を大量に消費して体を太らせたて妊娠の準備を始めます。

デビル

妊娠・子育ては体力勝負よ!ガリガリに痩せてたら子育てなんかできやしないの!!

出産、そして生き残りをかけての競争

タスマニアデビルは一夫一婦制ではありません。

オス・メス共に複数の相手と交尾をすることが知られています。

妊娠期間は短くてたったの21日間

重さ約 0.2 g米粒大の赤ちゃんを20~30匹産みます

タスマニアデビルも有袋類ですから生まれたばかりの米粒大の赤ちゃんはお母さんの袋の中へ自力で移動しなければなりません。

これだけ多くの兄弟姉妹がいても袋の中の乳首は4つしかありません。

早い者勝ちの最初の4匹だけがお母さんのおっぱいのもとへたどり着き、たどり着けなかった赤ちゃんはお母さんに食べられてしまいます。

デビル

野性の世界は厳しいの。産まれた瞬間から競争よ!!

無事にお母さんの袋の中に入った赤ちゃんたちも全部が成長できるとは限りません。

平均して野生のデビルでは1~2匹、飼育下のものでも2~3匹の赤ちゃんたちが無事に成長できます。

デビル

タスマニアデビルの赤ちゃんはジョーイ/ joeys(有袋類の赤ちゃん)、パップ/ pups(子犬)、インプ/ imps(小さな悪魔)と呼ばれるよ。

成長から独立へ

袋の中の赤ちゃんたちは90日経つと毛も生え揃ってきます。

その後ようやく目が開き、しっかりと咥えていた乳首を少し緩めることができるようになります。間もなく袋の外へ出る時間です。

生後105日経つといよいよ赤ちゃんデビルはお母さんの袋の中から出てきます。

約0.2 gだった体重は1000倍の約200 gになっています。

袋から出てきた赤ちゃんはしばらくは巣穴から外へ出ようとしません。約3か月間を巣穴で過ごした赤ちゃんたちは10月~12月頃になるとお母さんと一緒に巣穴から外へ出始めます

この時期にワイルドライフパークなどへ行くとポッサムやコアラみたいにお母さんデビルの背中に乗っている赤ちゃんデビルを見られることがあります。

しばらくはお母さんのミルクを飲んで育ちますが1月になると一人前の若者デビルとなって独立し巣立っていきます。

妊娠から巣立ちまで約9~10か月を要しますのでメスは一年のほとんどの時間をを子育てに使っています。

メスは生涯に4回の繁殖期と平均して12匹の赤ちゃんを育てています。野生の寿命を5年とすると生涯のほとんどを子育てに費やしていることになります。

デビル

私の使命は赤ちゃんを産んで立派な若者に育てること。わが人生に悔いなしよ。

タスマニアデビルの絶滅危惧問題

最初の絶滅危惧

白人たちがタスマニアへ入植してきて羊や牛などの家畜の飼育し始めました。

またポッサムやワラビーなどを使って毛皮製品の制作なども行っていました。

その当時入植者たちによって”デビル”と名付けられた動物はそういった家畜や毛皮のための動物の脅威とみなされていました。

そのためタスマニアデビルを駆除することはタスマニア州政府の方針でもありました。

タスマニアデビルは人間により狩られあっという間に個体数が減少して絶滅の危機に瀕してしまいました。

幸いにも人間たちはこの動物を1936年に絶滅したタスマニアタイガーのようにしてはいけないと気付き、1941年6月に公式に保護動物に指定されています。

タイガー

僕はタスマニアタイガー。別名フクロオオカミ。僕らは絶滅させられたけどタスマニアデビルたちが絶滅させられなくて本当に良かったよ。

以来、タスマニアデビルはゆっくりと個体数を増やしていきました。

現在ではタスマニアデビルが家畜への脅威だというのはまったくの見当違いだったといわれています。

2回目のそして現在進行形の絶滅危惧

現在、タスマニアデビルはデビル顔面性腫瘍疾患Devil facial tumour disease/DFTD)という伝染性のガンにより個体数が激減しています。

野生のタスマニアデビルの数は80%以上減少しているといわれており、このままいくと10年後には野生種はいなくなってしまうかもしれないとの悲観的な推測もあります。

この病気は1996年にオランダの写真家がタスマニア北東部で顔面に腫瘍のあるデビルを撮影したことにより広く知られるようになりました。

この病気は口の周りの腫瘍から始まり、次第に口の中や下顎、目の周り等に広がっていき摂食障害による飢餓、臓器不全などなどにより6か月以内に死亡してしまいます。

この病気の伝染経路にはタスマニアデビルのある習慣が非常に密接に関係しています。

タスマニアデビルたちは餌の取り合いなどで互いに噛み合う習性があります。

噛み合う相手がその腫瘍を持っていた場合、噛んだ歯にその腫瘍の細胞片がついてしまいそれによって病気が広がっていきます。

また病気のデビルが食べていた獲物を共有した場合やこの病気で死んだデビルを摂取することによっても病気が広がっていってしまいます。

現在、野生動物保護園や動物園での繁殖プログラムや病気のデビルがいなくなった場所への健康な個体の再導入、ワクチンの開発などさまざまな方法でタスマニアデビルを絶滅から防ぐための方策がとられています。

タスマニアデビルを絶滅の脅威にさらさせているのはDFTDだけではありません。

道路脇に死んでいる動物を食べに集まるタスマニアデビルが自動車に轢かれてしまい死亡するというケースは、絶対個体数が減った現在では以前よりも少なくなりましたが、依然としてタスマニアデビルの個体減少の主な原因のひとつです。

タスマニアで夜間のドライブをする場合はタスマニアデビルをはじめとした野生動物たちに十分注意して、安全運転を心がけてください。

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